2年越しで挑んだ⽇本初のソーシャルサーカスカンパニー初公演、 期間限定でオンライン配信決定!

 パフォーミングアーツを通じて、障害・性・世代・⾔語・国籍など、個性豊かな⼈たちと⼀緒に楽しむ芸術祭「True Colors Festival 超ダイバーシティ芸術祭-世界はいろいろだから⾯⽩い-」(日本財団主催)の一環で、True Colors CIRCUS/SLOW CIRCUS PROJECT『T∞KY∞(トーキョー)〜⾍のいい話〜』が2年がかりで制作されました。

 ところが4⽉25⽇から東京都の緊急事態宣⾔が発令されたことに伴い、4⽉25⽇(⽇)・26⽇(⽉)に予定されていた本番の公演は止むを得ず中⽌になってしまいました。しかしながら、なんとか、ギリギリ4⽉24⽇(土)にマスコミ向けに公開されたゲネプロだけは行なうことができました。この映像が期間限定で、全編映像が配信されることになりました。
 SLOW LABELのクリエイティブプロデューサーで、東京2020開会式・閉会式4式典総合プランニングチームのメンバー、長野冬季オリンピックではボランティアにも参加している栗栖良依さんは次のようにコメントをしてくださいました。
 「昨年に続き、今年もまた、新型コロナウイルスの影響で公演が中⽌となってしまいました。全ステージ満席のご予約をいただいていたので、その皆様に⽣で観ていただくことができなかったことは⾮常に残念ではありますが、なんとかゲネプロを映像に収めるところまでは実施できました。全編、バイリンガルで世界に向けて配信したいと思います!
 本作は、現代を⽣きる⼆⼈の旅芸⼈が『T∞KY∞(トーキョー)』という名の森に迷い込み、それぞれの視点で世界を捉えながら⽣きる⾍たちに出会う物語です。フィクションでありノンフィクション。サーカスの技を習得する過程で築いた、ひとりひとりの成⻑とチームの絆、そのリアルなドラマを⽬撃できる作品です。誰もが個性を特技に変えてキラキラと輝ける舞台、そんな私たちが提案する未来の景⾊を、どうぞお楽しみください。そして、いつか、次こそは、リアルな舞台で会えますように」

 『T∞KY∞(トーキョー)』を演出したのは、松本市在住のサーカス・アーティストの金井ケイスケさんです。
 「今回、緊急事態宣言発令により、本公演が中止となり、関係者向けの内覧会という形で公演を行ったわけですが、2年越しの公演がやっと終わった!という想いと、観客に向けて公演ができなかった悔しさが入り混じっています。多くの反響と手応えがあったので、必ず一般のお客さんに向けて本公演を行いたいと思っております。個性豊かなサーカスメンバーの中には重度の障害がある者もいますが、見ている人には障害のある人もない人も溶け込んで見え、違いを意識しなくても楽しめるところが見どころです。さまざまな個性の居場所があるのはサーカスの良いところでもあるし、私たちが2014年から培ってきたノウハウやチームワークがあって成り立っている世界です。いろんな人がいて、いろんな楽しみ方がある、「ザ・サーカス」と言える公演です! 動画でも楽しめる部分も多いと思いますが、やはり生のパフォーマンスを見てもらいたいので、長野でも企画のお誘いをいただけたら参りますので、応援よろしくお願いいたします!」

 また、須坂市在住で、SLOW LABELではアカンパニストとして参加しているAYAKA(鈴木彩華)さんも、生き生きとした笑顔でパフォーマンスを披露されていました。
 「今回は、たくさんのご予約をいただいていたにもかかわらず、生の公演をお届けできなかったのが、あれだけの準備期間が幻みたいに消えてしまったような感覚でとても残念です。しかし、プロジェクトで出会えた方、SLOWでお馴染みのメンバー、公演までの楽しい時間・ときめき・怒り・さみしさ・戸惑いといったものにただ向き合い続けて自分が変化した(変態した?)過程も大切に思えます。
 今回配信が実現したことで、現在ベースにしている長野県内の仲間や記事を読んでくださっている方々、国外の大切な人たちにも公演を少しでも味わっていただけるチャンスができたと前向きに捉えています。チャーミングで個性豊かなキャラクターたちが、それぞれ役割を果たしながら調和して生きる森の世界を楽しんでください! そして、コロナ禍で配信公演の可能性を知ることができましたが、お客様の前でパフォーマンスをしたいという気持ちを今回改めて強く感じました。SLOW CIRCUS PROJECTの本番はこれからです! それまでにまた虫たちも変態を遂げているかもしれません。ゆっくりのんびり、舞台でお会いできる日を楽しみに、それまで元気にお過ごしください!」

 「True Colors Festival 超ダイバーシティ芸術祭-世界はいろいろだから⾯⽩い-」では、誰もが鑑賞しやすい環境を⽬指し、多様な背景や個性のある⼈にとって居⼼地のよい会場づくりにも取り組んでおり、今回の映像配信では、⽇本語⾳声ガイド、⽇本語・英語字幕の鑑賞サポートをご利⽤いただくことができます。障害の有無、年齢、性、国籍を超えて集まった市⺠パフォーマーを含む総勢43名の出演者たちでつくりあげる、⽇本初のソーシャルサーカスカンパニーによる⼤規模な野外サーカスを是⾮お楽しみください。

【写真クレジット】 撮影:冨田了平 提供:日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS

True Colors CIRCUS /SLOW CIRCUS PROJECT 『T∞KY∞ 〜虫のいい話〜』
配信期間:2021年6月1日(火) 10:00〜 7月31日(土) 24:00
公演時間:約60分 ※情報保障(字幕・音声ガイド)付きの動画も公開予定です。
動画URL:
True Colors Festival YouTube公式チャンネル
https://www.youtube.com/c/TrueColorsFestival/
スローレーベル YouTube公式チャンネル
https://www.youtube.com/c/SLOWLABEL
主催:日本財団 DIVERSITY IN THE ARTS、NPO法人スローレーベル

NPO法人リベルテのアートイベント「ちくわがうらがえる」は、あるべき未来を迎えにいく意志のこと

上田市柳町に拠点を置く、NPO法人リベルテでは、2020年11月1日~30日にアートイベント『ちくわがうらがえる−あなたの世界が世界をかえる−』を実施しました。リベルテさんでは、障害のある利用者をメンバーと呼び、「何気ない自由」を尊重し合える社会や関係づくりを目指しています。『ちくわがうらがえる』は、これからの彼らにどんなヒントをもたらしたのでしょうか。代表理事の武捨和貴さんに話を聞きました。

ちくわがうらがえるは思いのほか大きな催しになりましたね。

武捨さん 2020年夏から新しい拠点としてゆっくり準備していたroji(ろじ)という一軒家を使ったメンバーの作品やグッズ、リベルテのイベントの展示。メンバーのS.S.G.さんがつくった石膏粘土の昆虫を町歩きしながら探す昆虫採集展。soin cafeさんで行った石合昌史さんの展示。「そろそろコロナ」というトークイベント。千野菓子店さんがつくってくださった猫をモチーフにしたお菓子。あとはモッシュという上小圏域障害者自立支援協議会の権利擁護委員会の人たちとチームをつくり、障がいのある人もない人も関われるイベントを通じ、障がいのある人も暮らしやすい地域づくりを目指す取り組みなど、いろいろ行いましたね。

実際やり終えてみていかがでしたか?

武捨さん 大変でした(笑)。でも「ちくわがうらがえる」というテーマに基づいて、スタッフやメンバーさんが抱いている感覚や関係性が変わるとか、価値観が変わるとか、そういったコンセプトを立てた展示会がメンバーとできるんだということが実感できたのはシンプルに良かったと思っています。同時に地域の方々、普段からリベルテを知ってくださっている方々に向けて、“施設の外”というものを意識した企画を展開できたことも良かったですね。今までは内向きに「なぜイベントをやるんだろう」と理由を求めていたのですが、メンバーの作品やこれまでリベルテがやってきたイベント自体を展示会やアートイベントとして見てもらえることができたとは思います。あとはいろんな人を巻き込めたというか、気づいたら広がっていって、記録集にまで反映できたのもすごく良かったです。

武捨さんは周囲の人びとを上手に巻き込みますよね。

武捨さん いえいえ、皆さんに甘えて広げ過ぎちゃいました。助成金が取れたこともあって意図的に大きくやったんですけど、そうでなくても「一緒にやりたい」「一緒にやってもいいよ」とおっしゃってくださる方々がこんなにもたくさんいるんだとわかったことがうれしいです。アートイベントをやったからこそ改めて可視化されたというか。福祉の現場って、現場をすごく大事にして、プライドを持って運営しているんです。けれど知らず知らずのうちに「現場」をケアしている場のこと、つまり施設のことだと思い込んでいた気がします。でも『ちくわがうらがえる』をやったことで、自分の現場がどこにあるのか考える機会になりました。僕にとって自分たちの現場は、メンバーが生活している地域や生きていきたい場所なんだ、と。年明けぐらいから、『ちくわがうらがえる』の記録集ができてきたくらいから言語化できるようになりました。以前は福祉施設にいろいろな人を集めたいという思いがあったんですけど、別に集めなくても、通ってくれているメンバーが生活をしているところを現場として強く意識化すればいいだけなんです。

常々感じていたのは、上田市内のお店やスペースに、リベルテのメンバーさんの作品があふれていて、でも作品が一人歩きするのではなく、しっかりメンバーさんの顔が見えるのと同時に、お店やスペースの皆さんともつながっていることでした。施設にこもるのではなく、リベルテが街ににじみ出ている感じというか。

武捨さん ありがとうございます。アートの話ではありませんが、福祉が制度だけを指すのではなく、「福」「祉」も幸せを指す文字である通り、より生活に根ざしたものとしてあったほうがいいと思うんです。そして施設の中で起こっている出来事を外に持っていったときに、どう成り立つのか。地域の人や社会の人に対して、施設だからじゃなく、利用者さん一人ひとりが「こういう生き方だから」「こうやってサバイブしてきた」ということを僕らが発信することでこそ、もっと可能性が広がるように思います。僕らが、障がいがあって福祉施設にやってくる人たちと関わり続けている理由はそこにあるのかなと。施設の外側にアトリエでの日々や出来事を広げるのは、支援者だけではできない、メンバーと一緒だからできることです。それを福祉制度や専門の言葉だけでしか言い表せないのは良くないと思っています。もうすでに生きている人がいて、そこに作品もアートも生活もあることを発信していけたらいいなと思いますね。

「障がい者は障がい者である」という文脈を僕らが変えていかなければいけない

「ちくわがうらがえる」というタイトルに関しては改めてどう感じますか?

武捨さん でき上がった記録集を読み返し、その中に書かれている感想を読んでいて、改めて自分で振り返ったときに思い出したのが、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』だったんです。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」って日本語に訳すと「未来へ戻れ!」じゃないですか。「ちくわがうらがえる」をそういう文脈で考えていた気がします。僕らが今いる現実はまだうらがえっていないから、あるべき未来に向かって取り戻しにいく、迎えにいく意志の話かなと。

なんかめちゃくちゃかっこいいですね。

武捨さん これ、恥ずかしすぎて誰にも言ってないんですけど(笑)。僕自身、自分の人生や家族についていろいろ複雑なことがあったけど、そこに居続けなればいけないわけでも戻るのでもなく、どうなるかわからない未来に対して、無責任に、ポジティブにうらがえっていくんだという意志の方が大事だということを、「ちくわがうらがえる」という言葉に例えて言いたかったんだと思うんです。つまりメンバーやスタッフがこれから過ごしていく意志の方が断然重要であり、そう思って人が生きていきたこと、これからのことを肯定したかったのかもしれません。

「うらがえる」という言い回しが、何かこれからを予見させるニュアンスの入った言葉なのが絶妙ですよね。

武捨さん スタッフが言ってくれたんですけど、僕らが裏返すわけではなくて、「ちくわが主語なのもいいね」と。つまり物事が、そうであるべきという状態からズレていかれるというか。「それはそうである」ということを伝えることもアートの役割ですけど、福祉の考えからすると支援対象として「障がい者は障がい者である」という文脈を僕らが変えていかないといけないと思っているんです。未来に向かっていくときに、支援の意味や「障がいがある」ということが今現在のものから変わってくる可能性があると思います。そうすると福祉の意味も変わらざるを得ないし、支援を商売にしている僕らも変わっていかなければなりません。

『ちくわがうらがえる』にはそうした期待が込められていただわけですね!

武捨さん はい。今回トークイベントに参加してくれたのきしたNPO法人場作りネットの元島生さん、京都のNPO法人スウィングの木ノ戸昌幸さんもそうですが、制度や専門家の言葉で自分たちの仕事や生き方を言い表さないように気をつけている人が、僕の周りには多いんです。でもそれはとても難しいことで、自覚的に今の日本の社会や福祉の状況、制度について、そして関わっている人、一人ひとりがどう生きているか知らないと簡単に間違えちゃう。だから同時にそのことをどうしたらいいのかを考えたりしますね。
 そういう意味では場作りネットやほかの福祉の現場でどう生きる選択に多様性を広げようとしている団体や個人、今リベルテも参加している上田市でコロナをきっかけに誕生した、新しいつながりを作る試み「のきした」の動きとか、すごく参考になるし、ああいう取り組みが広がっていけばいいと思います。自分たちのことを省みたときに制度によって成り立っているんだけど、その外側があると仮定したときに、どうしたら「うらがえる」のかを考え、リベルテとして取り組んでいかないとダメだと考えています。

とても興味深いお話です。

武捨さん 個人としても法人としても、そういうことを意識して活動していこうという気持ちがあります。制度の中で施設を運営することが、障がい者を支援する「支援者主体」の語り方になってしまうのは避けたいですね。僕は楽しくイベントをやっているだけなんです。例えばメンバーが家で絵を描いていて、その場所が街の中のアトリエに広がり、展示会に出せる、という傍らに居続けられるからそう感じています。メンバーによっては手芸でもいいし、読書でもいいし、昼寝でもいい。リベルテで出会える人、一人ひとりに違う多様な生き方や存在のあり方に触れられること、そこにイベントをやる意味があると思っています。

今後の展開についてどのようにお考えですか?

武捨さん 5月22日から1週間、リベルテの引っ越しの様子をメンバーとスタッフがインスタントカメラ50台近くを使って記録した写真展を企画してます。2021年はrojiでのガーデニングのイベントも『ちくわがうらがえる』にしていこうかなと思っています。去年はアートフェスっぽくやったものを今年はリベルテのメイン・コンセプトとしてメンバーとスタッフの日々の活動として日常化していくようにと思っています。
 今年からリベルテが3拠点に分かれるので、そうやってイベントにすることで、メンバーさんも地域の中に自然と入り込んでいけるし、メンバーさんがいる場所が中心になって、うらがえっていく出来事が増えればいいと思っています。

記録集「ちくわがうらがえる」はリベルテで購入できます。

NPO法人リベルテ
上田市中央西1丁目9-5
Tel. 0268-75-7883(代表)
https://npo-liberte.org/

諏訪市在住の言語聴覚士・原哲也さんが『発達障害の子の療育が全部わかる本』を出版

 「児童発達支援事業所WAKUWAKUすたじお」を営む、一般社団法人WAKUWAKU PROJECT JAPAN代表理事で言語聴覚士・社会福祉士の原哲也さんが、2冊目の著書『発達障害の子の療育が全部わかる本』(講談社 こころライブラリー/1,540円)を上梓しました。

 「読者の対象は保護者の方です。うちの子どもが発達障害かどうかと悩んでいる親御さんはどういうところに相談したらいいか知りたいと思っていらっしゃる。一方、療育に入っているお子さんをお持ちの親御さんは、今起こっていることだけではなく、これから小中学校に入ったらどうなるんだろうか、思春期に向かっていくときにどうなるんだろうか、果たして就職はできるんだろうかなど、将来についてたくさんの悩みをお持ちです。この先どうなるかといった情報はもちろん、療育では社会福祉制度はすごく幅広いし、関わる人も多くて複雑。そのへんがパッと見てわかるような本が必要だと思って、文字量に圧倒されないで、知識を得られるような本をつくりたかったんです」

本書では、
・発達障害とは何か
・療育とは何か
・療育は実際に何をするのか
・保護者は何をしてあげられるのか
・発達障害のある子のための支援の制度
・進学
・就職のこと
・お金のこと
と、18歳までの療育期を中心に、乳幼児期から生涯にわたって発達障害のある子に必要な情報をできるだけ幅広く紹介しています。

 原さんは主宰する「WAKUWAKUすたじお」のほか、いろんな市町村に出向いて1カ月に約100人、1年にのべ1200人もの相談者さんにお会いになっているそうです。そうした皆さんが聞きたいことは共通しており、その相談に当たった経験から、痒いところに手が届くような本を目指しました。「お父さんお母さんの不安は消えないかもしれないけれど、こういうことかとエンパワーしたい、勇気のもとになってほしい」、さらには「実際に人とつながるのは大事なので、どういう人とつながればいいかを知ってほしい」という思いで書かれています。

 原さんは2018年にも、『発達障害のある子と家族が幸せになる方法』を手がけています。こちらはコミュニケーションに特化した内容で、発達障がいのあるお子さんと親御さんががどういうふうに関わればいいか、関わりが実ると親子関係も充実し、その先に親子の幸せがあり、そうした良好な関係の中で育ったお子さんがやがて自分の幸せを探していけるようになるという切り口で書かれています。学苑社刊、1,760円。

児童発達支援事業所WAKUWAKUすたじお
諏訪市湖岸通り5-19-15
Tel.0266-75-1226
http://www.waku-project.com/

演劇やダンスを楽しめる放課後等デイサービス「プレイハウスつみき」オープン

伊那市在住の井口萌さんが、この5月から、上伊那郡箕輪町に障がいのある子どもたちと演劇やダンスなどを楽しめる放課後等デイサービスを開設します。自身も舞台俳優を目指した経験のある井口さんに想いを伺いました。

井口さんが演劇と出会ったのはどんなきっかけがあったのですか?

井口さん 僕はもともと身体が弱かったので、スポーツの部活は無理だということで、演劇をやってみようかということで、中学で演劇部に入ったんです。同時に駒ヶ根の市民ミュージカルにも参加させていただいて、そこから演劇が楽しくなって、ずっと続けてきた感じですね。本番で舞台に立つと、やっぱり日常にはない感覚が味わえるのが面白かったのかもしれません。また中学の部活だけだったら同世代としか関わりませんが、市民ミュージカルだといろんな世代の方と交流できたのも面白かったですね。

実は、東京で演劇を目指した時期もあったそうですね。

井口さん (北村総一朗さんもいた)劇団昴の演劇学校に通っていました。強く俳優になりたいと思っていたというよりは、漠然と、という感じでした。ただ演劇学校を終えるタイミングで準劇団員になれなかったので、そのままバイトをしつつ東京で暮らしていときにくも膜下出血で倒れてしまったんです。それがきっかけで実家に戻ってきました。今から15年ほど前のことで、今はもう体調は万全です。

それはよかったです。こちらに戻ってきてからはどんなお仕事をされていたのでしょう。

井口さん 体調も良くなり子どもと関わる仕事を探していたところ、知り合いから、みらい福祉会さんで人を募集しているということでお世話になりました。父が養護学校や特別支援学級で教師をやっていて、昔から休日の親子イベントなどにも一緒に参加して遊んだりしていたので、福祉の現場は身近だったんです。2年ほどアルバイトをしたころ、障がい者生活自律サポートの事業所 NPO法人CoCoの理事長をしていた父の勧めもあり、本格的に福祉施設で働くようになりました。CoCoは自閉症や知的な遅れのある利用者さんが多いところでした。ただ35歳になって新しい挑戦をしてみたくなり、仕事を辞めたんです。その少し前にCoCoの中でミュージカル部を始めたんですよ。それは高校生の利用者さんが、僕が演劇をやっていたことを知っていて、「台本を書いたから一緒に演じてほしい」と言ってくれたのが始まりでした。2、3回練習して、CoCo内の発表会で上演したんですけど、それが面白かったから、ほかの利用者さんにもお声がけして、1年に1回発表するというスタイルで継続してきたんです。そこには仕事を辞めてからもボランティアとして関わってきました。

井口さんはそこで気づきがあったのですか?

井口さん 利用者さんに何か能力的な変化が出てきたというよりは、やっていることが楽しいからということです。その中から役者を目指したいとか、小学校の支援学級に通っていた子が中学になってから演劇部に入ってみたいとか、自分のやりたいことの一つに演劇とか表現が加わっていったことは大きな変化かなと思います。

井口さんは現場では関わり方をされているわけですか?

井口さん 僕が何かを指導するのではなく、楽しく、一緒につくっていくというやり方です。演劇って生産性があるわけじゃない。じゃあなぜ苦労して続けているのかと言えば、CoCoでは今まで感じられなかったことを一緒に体験してもらえることが面白く、大事だと思いました。

職員も利用者さん一緒に楽しみながら

それがいよいよ自ら事業所を構えて演劇をやろうという動きにつながったと。

井口さん ここは「つみきの家」と言って、障害がある方の親御さんたちが使っていて、月に1回、子どもと大人で一緒にご飯をつくったりして過ごす場所でした。僕らがここをお借りするにあたり、「つみき」の名前をそのまま使わせていただき、「プレイハウスつみき」とさせていただきました。1〜3月はDIYで稽古場の床張り作業をし、4月にでき上がったばかりなんです。

ここではどんなことをされるんですか?

井口さん 放課後の時間を使って舞台の作品づくりをメインに据えたいと思っています。最初にストレッチをして、少し体を動かしたらワークショップみたいなことをやって、作品づくりをするみたいに考えてはいます。ただ自閉症の方で、少し症状が重い方だと簡単にはできないと思うので、実際はご本人たちに合わせてやっていこうと思っています。また人によって表現できるものが違うと思うので、ダンス、演劇という舞台表現だけではなく映像作品などの活動も視野に入れています。今のところ中高生を主な対象としているんですけど、その年代は養護学校の寄宿舎に入っていたりするので、毎日やって来るというよりは、この曜日にという感じになってしまうでしょう。ですから具体的にガッチリとしたプログラムがあるというよりは、まずは顔を合わせてみて、みんなと相談しながら楽しく進めていこうと思っています。

健常者さんも参加できたりは?

井口さん そういう方がいらっしゃれば、ぜひ。実は今度、箕輪町文化センター付属 劇団 歩の飯島岱先生が『夕鶴』を上演されるんですけど、ここに通ってくるみなさんも一緒に参加してみないかとおっしゃっていただきました。利用者さんが参加してみたいということであれば、いきなり初舞台ですけど、導入としてとりあえず舞台を踏んでみるのもいいかもしれません。ありがたいお話です。

スタッフの方々はいかがですか?

井口さん 常勤の方がお一人、パートの方がお二人、そして僕という体制でスタートします。常勤は保育士として働かれていた方、パートは特別支援教育について学校で学び、ご自身はダンスをやっていた方と高校時代に演劇部に入っていた方です。

「プレイハウスつみき」がどんな場になったらと思っていらっしゃいますか?

井口さん 僕は駒ヶ根の市民ミュージカルに参加してきたと申し上げましたが、もちろん演技指導をしてくれる方、演出家の方がいらしたんですけど、教えられて何かをするというよりは自分たちで考えながらつくるという場所でした。ここも、職員には児童指導員という名称がつくんですけど、指導云々ではなく、一緒に表現をする、職員も利用者さんも同じラインに立って活動していく場所にしていきたい。ゆくゆくは一年に二作品つくりたいと思っていますが、地産地消じゃないですけど、自分たちでつくって自分たちで楽しむみたいな感じでいいんじゃないかと思っています。

プレイハウスつみき
上伊那郡箕輪町中箕輪11722-2
0265-98-7584
playhouse-tumiki@bizimo.jp

美術家・中津川浩章さんが個展「線を解放する」を開催

信州の障がいのある人の表現とアール・ブリュットを掲げた「ザワメキアート」の審査員で、美術家、障がいがある人たちの表現活動のサポート、福祉施設のアート活動全体のディレクションなども行なっているアートディレクター、美術家の中津川浩章さんの個展「線を解放する」が開催されます。

『線を開放する』はコロナ禍の一年の中で描かれた絵画を展示されるそう。中津川さんからコメントをいただきました。

私はいつも閉じることによって開く人間の想像力について考えていました。自由に人と会いコミュニケーションの中から生まれるアート、逆に自由がなくさまざまに規制され制限された中から生まれる表現、私の作品は以前から後者の意味を考え、その可能性を探り制作を続けてきました。そして今回のcorona禍によってそのことがより明確になった気がします。

さまざまな制限の中での生活そしてそこから生まれてくる作品たち。そう!不自由だからこそ画面の中で線は自由を求め踊り、歌います。線は人間の思惑からも意味からも解き放たれ、そこに「在る」だけになります。描き直しができない一回性の技法によって即興的に一気呵成に描かれるからこそ未知なものを迎え入れることができ、描くことは偶然を必然に変える魔法となるのです。生成りの綿キャンバスにバイオレットだけで描かれた100号サイズから小作品まで、そして紙に描いたドローイングなど20点くらいを展示する予定です。

また、中津川さんと交流のある作家の田口ランディさんもコメントを寄せていらっしゃいます。

描くことの根源に向かう力

中津川浩章の作品の特徴はその即興性にある。描く時、彼は完結を目指す。絵筆をもって一本の線を描き始めた瞬間、全身全霊で一気に描きあげる。思考は停止する。動いているのは野生の感覚だ。線は生きもののように躍動する。深い潜在意識の中から釣り上げた魚のように、そのいのちを帯びた線たちは泳ぎ回る。
なにが生まれてくるかはわからない。予感だけがある。中津川の作品は、ことば以前の「気配」を刺激する。人がことばを発する前に体に生まれるうずき、言語化されずに消えていく精神の気泡。ことばは、なにかを指し示してしまう。だからたくさんのものを、わたしたちはことばによって失っている。ことば以前の線のなかに、色のついたロマンチックな情動はない。その代わりに生まれたての生命のような、恐ろしいまでにピュアな、衝動が感じられる。それは、自然界の精霊のようであり、人間界の悪霊のようでもある。神話の世界がそこにある。

作家 田口ランディ

「線を解放する」中津川浩章個展
日程:2021年5月26日(水)〜6月6日(日)
会場:櫻木画廊(東京都台東区上野桜木2-15-1)
開館時間:11:00〜18:30(最終日は17:30まで)※月・火曜休廊

オープンアトリエ「風と太陽」、2021年6月12日(土)開催

駒ヶ根市の障がい者支援施設「長野県西駒郷」で行っているアトリエです。毎月第二土曜日に開催します。何らかの障がいを持つ方で、西駒郷に関係のない方でも自由にアート活動を行うことができ、スタッフが制作をサポートいたします。

【対象】 知的、身体、精神、発達など何らかの障がいを持つ方で、小学生以上。

  • 参加に関して迷われる場合はお気軽にご連絡ください。
  • 昼食が必要な場合はご持参ください。
  • 施設の都合などで第二土曜日に開催できない場合は事前に連絡いたします。

森林アートセラピー@くらしまわり春〜夏2021

森の奥へ入り、心地よい場所と自然素材を見つけて
感覚のままに創作します。
そこから、森と心の声に耳を澄まします。

森と戯れながら心を癒していく
森林アートセラピー

自然と自分とつながり、慈しむ静かなひととき。
森の奥へ入って、心身を解放してみませんか?

講師は、森のアートセラピストNAOです。

第12回 うえだ子どもシネマクラブ「ブータン 山の教室」

学校に行きづらい日は、映画館に行こう!

うえだ子どもシネマクラブは、学校に行きにくい・行かない子どもたちの新たな「居場所」として映画館を活用する「孤立を生み出さないための居場所作りの整備〜コミュニティシネマの活用〜」事業の一つです。上映会には子どもたちや保護者のみなさま、そして教育に関わるみなさまや支援に関わるみなさまをご招待していきます。

「ブータン 山の教室」

監督・脚本:パオ・チョニン・ドルジ
出演:シェラップ・ドルジ、ウゲン・ノルブ・へンドゥップ、ケルドン・ハモ・グルン、ペム・ザム
©2019 ALL RIGHTS RESERVED

ヒマラヤ山脈、標高4800メートルにある秘境ルナナ村に響くブータン民謡。
都会から来た若い先生と、村の人たちと子どもたちの心の交流を描いた感動作。

公式サイト:bhutanclassroom.com

ちくわがうらがえる2021 展示会『リベルテのひっこし|LIBERTE is moving in…』開催

ギャラリーのあるアトリエを開くために借りた建物の掃除をしていると通学路にいた小学生から「“鬼の家”で何をしているの?」と尋ねられました。子どもたちにとって不思議で少し怖かった建物でアトリエを始め8年が過ぎます。

その間にリベルテではアトリエを柳町内にもう1棟借り、rojiという新しい拠点もできました。通学路を通っていた小学生の何人かは、置いてあるマンガを読みに立ち寄り遊びにきてくれていました。

そんな子どもたちも引っ越したり卒業したり。そして、今度はリベルテのメンバーとスタッフが、この拠点を離れ、新しい場所へ移ります。

リベルテのアトリエの記録と記憶が交差する企画展示(アーカイブエキシビジョン)を行います。
メンバーとスタッフと、リベルテのある街の人と視線と風景。
「ここにあった居場所」についての展示会です。
リベルテのアトリエをインスタントカメラで撮影した写真の展示を中心にみんなで「引っ越し」を行う企画です。

「リベルテ」の写真募集します!

イベント「リベルテのひっこし」に合わせ「リベルテの写真」募集します!
リベルテを撮影した写真を持っている人に、その写真をぜひ、リベルテの記録として、また記憶として残すために、4月24日から5月15日まで、募集しています。
以下のいずれかの方法で投稿してください。
メール hikkoshi@npo-liberte.org
投稿フォーム(Googleフォーム) https://forms.gle/s77oHnz78AsFuejQ6

お送りいただいた写真は、今後リベルテの紹介や印刷物、SNSなどのインターネットで公開することもあります。人物が写っている場合、個人情報など確認の上、投稿ください。
投稿していただいた時点で同意していただいたものとして取り扱いいたします。