こんにちは、「ぶっとびアート」の笹田夕美子といいます。
2018年に御代田町に設立したサムエル幼稚園というインクルーシブな幼稚園と、そこに併設される「親子支援センターハンナ」という事業所で働くために、静岡県浜松市から移住して参りました。生業は臨床心理士・公認心理師です。生まれは広島県呉市、学生時代を所沢で過ごした後、浜松の療育センターで、障がいのある子どもとそのご家族に関わるお仕事を23年間やってきました。そんな中、出会ったご家族のご縁で認定NPO法人クリエイティブサポートレッツ(以下、レッツ)に関わるようになりました。
レッツは、障がいのある人たちの表現活動を支援する団体ですが、アルスノヴァという障害福祉サービスを提供する事業所と、「たけし文化センター」をはじめとする文化事業、最近は、重度の障害をもつ人が住まうシェアハウスやヘルパー事業、障がいのある人のつくる作品だけでなく、その人たちそのもの、障がいのある人と過ごす場を提供するような観光事業等を手がけています。レッツで、私自身も、価値感を揺さぶられるような、とにかくおもしろい人たちにたくさん出会いました。障がいのある人、ない人、アーティスト、これまで出会ったことのなかったさまざまな職業の人、それぞれの人がだいじにしているものを垣間見ることがなにより面白く、そういうことに惹かれる自分だということも発見しました。
「ぶっとびアート」も、もともとは2005年にレッツの一講座としてスタートしました。レッツが障害福祉事業を本格的に始動する際の組織改編に伴って独立し、2008年から村松弘美さん(ワークショップコーディネーター)と私のぶっとびコンビで、気ままな任意団体として活動を続けています。
「ぶっとびアート」は、障がいのある子もない子も、それぞれのちがいを生かしあい、持ち味を発揮できる場作りを目的として、当初は、子どもたちだけの活動を計画していました。しかし、あるときから、子どもの付き添いで来たおとなが、本気で何かを作り出し、遊びはじめると、子どもにとっても、とてもよい場ができることを発見しました。そして、そこに障がいをもつ子どもたちがいて、想定外の“もの”や、“ごと”を生み出すことで、場がさらにおもしろくなることもたくさん経験しました。上手とか、立派とか、有名などという物差しではなく、「想定外のおもしろさ」や「猛烈さという新たな価値にふれ、子どももおとなも驚いたり、感心したり、真似てみたりするのです。
御代田にきても、浜松に月に一度赴き「ぶっとびアート」のワークショップを続けてきたのですが、コロナ禍で、移動がままならなくなりました。こんなときこそ、あそび心の発揮しどころ!と、Twitterでおうち時間につくった作品をハッシュタグ「#ぶっとびあーと」をつけて投稿してもらうワークショップを開催しました。次々と投稿される作品を、思い込みたっぷりで面白がっては褒めちぎると、さらなる続編の作品がアップされてきたり・・・。Zoomを使ったワークショップもやってみました。子どももおとなもはじめて臨むZoomに戸惑いつつ、作品だけでなく、家での暮らしも見え隠れして、しまいには庭のスイカなども発表したりなんかして、これまた褒めちぎったり・・・。
ぶっとびアートのウリは、ワークショップタイトルとユルさと発表タイム。おもしろそうなタイトルをつけて、時間と場所を決めて、そこでおのおのが作ったものを、みんなで最後におもしろがって褒めちぎることしかしていなかったことにあらためて気づきました。
あまり(というか、ほとんど、まったく)なにも教えてないので、取材に来た人などに「アートの先生は誰ですか?」ときかれると、ちょっと困ってしまいます。
コロナ禍という足かせのおかげで新たな出会いもありました。どうせリモートなら、交通費もかからないので、札幌の子育てグループといっしょにトークやワークショップをしてみたり、沼津の支援学校の中高生と毎週金曜日の夜に、Zoomで迷走するトークや歌、即興演奏のワークショップにもお誘いいただきました。
そうそう、レッツで2020年に企画された雑多な音楽の祭典「スタ★タン‼Z」というイベントでも、ぶっとびアートは新たな一歩を踏み出しました。御代田の大きなホールで、やりたいことなんでもOKと誘ってみると、ノリの良い子どもとおとな、ぶっとび仲間は長野にもいました!「火星のものまね」や「ちゃぶ台手品」、本気のダンスなど、笑いと熱気のパフォーマンスが次々飛び出しました。パフォーマンスには、Zoom越しに浜松の人たちから、批評やコメントももらいました。これが、長野県、御代田の地で、ぶっとびアートの幕開けです。
災害とか疫病とか、想定外のものやことが、いろいろ起こってくるこの頃ですが、コロナや誰かのせいにするばかりでなく、その不自由さを、どう面白がって、どう遊ぶか。この世の楽しみ方を、私たちは、「ぶっとびアート」という場で、想定外・規格外の子どもたちから学び、鍛えられてきた気がします。今後、信州でも「ぶっとびアート」をゆるゆると開催していく予定です。いっしょにあそびましょう!