県内リレーエッセイ

共に歩む

娘が18歳になった。

「ああ、娘が生まれた頃もこんな空だった」と見上げる空は
真っ青な空。

18年前、娘がダウン症だと診断を受けたときからずっと、考えていること。この子はどんなギフトを持って生まれた来たんだろう?


 
日本国内外さまざまな場面で活躍しているダウン症の方々を目にするたび
この子にはどんなことが向いているのかな。どんなことが得意なのかな。

興味がありそうなことに挑戦してきたことがいくつかあり、長いものでは10年、15年と続けてきたものも。8歳の時から毎年夏休みの制作として続けてきた書と色彩表現を組み合わせた書画?の作品づくりがそのひとつ。きっかけは、小学二年生の夏休み。ダウン症の書家・金澤翔子さんとお母様の講演会を、親子で拝聴する機会があった。

その時に翔子さんの迫力ある揮毫を拝見し、帰りの車の中で「わたしも書いてみたい!」とニコニコしている娘。ならば…と取り組んだ作品が「にじ」。はじめての書画(というのだろうか? 画というほどの絵はないのでよくわからない)。夕立の後、空いっぱいに広がる虹を見たときの感動を文字にしてみた。

この「にじ」をたくさんの方にほめていただき、翌年もまたその翌年も…と、その年の娘のマイブームや、思いを言葉にしてみて、書き(描き)続けきた。気がついたら、10年経っていた。

「にじ」
 長野県障がい者文化芸術祭 書道の部 奨励賞受賞
「ゆめ」
「ありのままで」
 長野県障がい者文化芸術祭 書道の部 奨励賞受賞
「和~なごむ~」
 長野県障がい者文化芸術祭 書道の部 優秀賞受賞
「幸」
「翼」
「輝く星」
「私の世界」
 詩画交流展にて審査員特別賞受賞
「夢へのいっぽ」
「私の中の宇宙」
 パラアートTOKYO2022ジュニアの部入選

そして18歳の夏。
今年は「共に歩む」

娘と過ごしてきた18年間。
合併症をいろいろ併せ持ち、これからどんなふうに成長するかわからない、小さな小さな娘を私が守らなきゃ、育てなきゃ、支えなきゃ。と肩にがちがち力が入っていた。

娘の成長ともに、私たちを取り巻く親族や恩師や友人たち、地域の方たちの教えや優しさにふれながら、だんだんと肩の力が抜け、「娘を通して見る世界はそんなに悪いものじゃないかも」そう思えるようになってきている。

時として、迷い悩むこともたくさんあるけれど。
これからも、娘と共に歩んでいけたらと思う。

そして娘と一緒に描いたり書いたり作ったりしていく中で自分自身もまた、そういうことが好きでたまらなかったことを取り戻した。仕事や家事、育児の忙しさにより、長年心の片隅にあったものを。

自分自身の制作もだが、それと同時に幅広い世代のバラエティ豊かな方々とクラフト制作等をする機会が今、形を変えて広がりつつある。
そのひとつが、障がい者支援施設での季節に合わせたクラフトが中心の活動「楽習会」。ご縁をいただいて1年半になるが、まだまだ毎回手探りである。

同じ題材に取り組むにもおひとりおひとり、できることが違う、言葉かけや対応が変わってくる。
施設の仲間たちは「先生、先生」と慕ってくれるけれど、「いやいや、みなさんが私の先生だから」と言わずにいられない。たくさんのことを教えてもらっている。
ひとりひとりのできることは限られているけど、ひとりひとりの作品の良さが合わされば、さらに素晴らしい作品になる。そのために私にできることを探している。

娘がいたからこそ出会えたこの場所。私の親ぐらいの人から娘たちと同じ世代の人まで。
その方たちの人生の一部を、私もまた、「共に歩ませて」もらっているのだと思う。

「いっぽ いっぽ」
2009ねん、12がつ29にち。

あたしのあしだよ。
ぷっくりしていて、かわいいでしょ。
 
だいま、5さい6かげつ。
14,5せんち。

まだまだ ちいさいあしだけど、
このあしで、いっぽいっぽ、あたしのみちをあるいていくんだよ。

写真:しいちゃん 5歳
文:母

竹花 汐音

18歳、ダウン症を持つ特別支援学校3年生。夢はアイドル、ドレスをデザインして作ること、自分のブランドを持つこと、お花屋さん、カフェの店員さん、ライオンになる…などたくさん。5歳で母のデジカメをいたずらするようになり、小学1年生の時に姉の真似をして書初めをしたのが初めての書道。小学2年生の夏から書と色彩表現を合わせた作品の制作を始める。10歳13歳の時に、娘の書、写真と母がつづる文でのおやこ作品展「しいちゃんとみた、空。」を上田市味遊cafeにて開催。

著者プロフィール

竹花真由美
上田市在住、ふたりの娘の母(次女がダウン症)。16年間の小学校教諭の経験を経て、現在は「atelier ku*」としてハンドメイドやイラスト、多肉植物の寄せ植えの制作、それにかかわるワークショップ等を県内で開催している。

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