県内リレーエッセイ

『バリアフリーなあそびば』へようこそ♡Part2

「日常生活の中の彩り」
と聞くと、みなさんはどんなことを思い浮かべますか?

ちょっとリッチなスイーツ
かわいいがつまった雑貨屋さん
お気に入りのお洋服
内装がすてきな宿でくつろぐ旅…

わたしは、
普段の生活よりちょっとだけ背伸びして味わう、非日常のことを思いうかべます。

でもそんな、キラキラした非日常が味わえない人生を送るしかなかったら?

5年前、わたしは養護学校の先生をしていました。
車いすに乗っていたり、医療的なケアを必要としたりするけれど、
小学校の教科書を使って学ぶ普通の小学生たちのクラスの担任をしていました。

その中の1人Aちゃんは、
脳動静脈奇形から脳内出血を起こし、
その後遺症のため医療的なケアが必要になり、養護学校に転校してきました。

Aちゃんは、何の前ぶれもなく、
登校班で通う通学路で脳内出血を起こして倒れてしまいました。
一命は取り止めたものの、半身に軽い麻痺が残り、
出血部が延髄だったために嚥下反射が起こらなくなってしまい、
口からごはんを食べられず、
胃に開けた穴(胃ろう)からペースト食を注入していました。

Aちゃんを含めたクラス全員で出かける時に困るのが、食事場所。
Aちゃんが食べられるミキサー食を提供してくれるレストランがないのです。
行くのは結局「いつものとこ」。
選ぶ余地がないのです。

「嚥下障がいがあっても食べれる、ちょっとリッチなスイーツがないなら、わたしたちがつくればいいじゃん!」

新型コロナウィルスが流行しだした2020年。
なかよしのRurukaとオンライン飲み会をしていて、なぜかそんな話になりました。

わたしの中でずーっと引っかかっていた、
Aちゃんの「食事問題」。
ある日いきなり「障がい児」になってしまったAちゃん。
それは特別なことではなく、
誰しもが病気や老化によって「障がい者」になるかもしれない。
そうなったら不便かもしれないけど、
でも、
「食べたいと思ったらちょっとリッチなスイーツが食べられる」
「行きたいと思ったらどこにでも遊びに行かれる」
障がいの有無にかかわらず、
それが「当たり前」なインクルーシブな社会をつくっていきたい。

8時間飲み続け、
画面越しにそんな熱い話をしたわたしたち。
よっぱらったノリで(!?)
「障がいの有無にかかわらず楽しく生きて生かれる社会を目指す」団体【バリアフリースタイルルルカ】は誕生したのでした。

わたしたちが作ったデザートは、
信州産のフルーツや野菜を材料にして、
嚥下障がいがあっても食べられるよう加工したものです。
水分を加えてかたさを調整すれば、胃ろうから注入することもできます。
そしてこだわったのは、「インクルーシブなこと」「見た目が美しいこと」。
家族みんなが同じおいしく食べられる味や食感に仕上げ、
かわいい見た目にもこだわりました。

個人からの注文はもちろん、
「コロナ禍で感染リスクを避けるため、校外学習を中止せざるを得なかったけど、クラスの子達にせめておいしいものを食べさせたい」
という養護学校の先生からもご注文をいただきました。

今わたしたちが力を入れて取り組んでいるのは、
「バリアフリーなあそびば」と称した
障がいの有無にかかわらずあそびに行くことができるマルシェイベントです。

コロナ前から
「マルシェイベントってたくさん開催されてるから行ってみたいけど、障がいがある子を連れて行きづらいし、
障がいがある子が楽しめるかどうか…」
という声を聞いていたので、
「じゃあそんなイベントつくったらいいじゃん!」とこれまたオンライン飲み会のノリで(笑)、
2022年、第1回「バリフリマルシェ」というイベントを地元千曲市で開催しました。

すぐ上の写真は、2023年1月に安曇野市のあづみの住宅公園で第3回目の「バリフリマルシェ」を開催した時のもの。

わたしたちが運営に携わったイベントは、この安曇野で5回目。
回を重ねるごとに賛同してくださる方が増え、
地元千曲市を飛び出し、長野市、安曇野市、諏訪市…といろいろな場所で「バリアフリーなあそびば」をつくる機会をいただいています。

地元千曲市や近くの長野市でやった時は、代表西條の娘の友達や、わたしの養護学校時代の教え子がたくさんあそびに来てくれたけど、
遠い安曇野ではどうなんだろう…
と不安もありましたが、
老若男女、たくさんのお客様があそびに来てくださり、
その中に車いすに乗った子や、
補聴器をつけた子、
病気があるのかな、と思われる子を何人も発見しました。
「うちの子には知的障がいと自閉症があるんです」と話しかけてくださったママさんもいました。

障がいのある人とない人が、
当たり前のように場を共有している。
そんな光景はカラフルに輝いているようで、いつもわたしの胸を熱く震わせます。

今わたしは小学校で発達障がいのある子ども達が通う通級指導教室の先生をしています。
そして、特別支援教育コーディネーターの仕事をしています。
わたしの仕事は、発達障がいのある子と在籍学級とを、必要な支援とをつなぐことです。

地域の小学校にいると、
養護学校はまるで遠い世界のようです。
でもAちゃんや、
Aちゃんのほかたくさんの、
養護学校でかかわった子ども達のことを今でもよく思います。

養護学校にいる子ども達と地域をつなぐこと。
それが養護学校から小学校に異動したわたしのミッションだと思うのです。
地域のみんなに養護学校に通う子ども達のことを知ってもらって、
当たり前のように共に生き、
みんなが障がいの有無にかかわらず楽しくカラフルに輝ける社会をつくっていかれたら…
そんな願いをこめて、今日もわたしは帰宅後22時、パソコンに向かって作業を始めるのでした。

さあ皆さん、ようこそ『バリアフリーなあそびば』へ♡

著者プロフィール

宮嶋友香理
大学で障がい児教育を専攻し、知的障がい、発達障がい、肢体不自由と幅広く障がいのある子の教育に携わる。養護学校、小学校、中学校、幼稚園の教員免許のほか公認心理師、特別支援教育士の資格を取得。現在は小学校の発達障がい通級指導教室の教育をしながら、友人のRuruka(西條)とともに「障がい児育児を楽しく」する団体【バリアフリースタイルルルカ】で活動中。

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